2006年4月30日日曜日

名称と実物の変化

ファームからやってくる水草の場合、便宜上不明種は殆ど無く、必ず学名か商品名が
ついてきます。
そのようなことから、日本の各問屋に同ファームから入荷する際の名称は必ず同じに
なります。ですので、その時点では間違えようは無いのです。
もし違っていることがあるようでしたら、問屋以降で間違いが発生したと考えられます。

しかしながら、稀に名称と実物が合致しなくなる場合があります。それは、ファームが
名称を変更、または名称はそのままで水草自体を変更した場合であります。

最近の例ですと、「オランダプラント」があります。2002年版オリエンタルアクアリウムの
カタログからは、かつての「Eusteralis stellata」はシノニムに落とされ、新名称は
Pogostemon stellatus」となり、水草自体もポゴステモンへと変更されております。
それに倣うようにトロピカのオランダプラントがポゴステモンへと変更されました。
しかしながら、トロピカの白札は「Eusteralis stellata」のままとなっており、変更は
水草自体のみであります。


その他の例を挙げておきます。

流通名「ポリゴヌム sp. ピンク」と呼ばれる水草ですが、こちらも販売元は
オリエンタルアクアリウムです。
以前のカタログでは「Potamogeton sp.」となっておりましたが、2002年版カタログでは
Polygonum sp.」に変更されております。水草自体の変更はありません。

現在「ロタラ ナンセアン(ナンシアン)」で流通している水草も、以前は別の名称で
呼ばれており、オリエンタルアクアリウムでは1995年版カタログでは「Mayaca sp.
と言う学名で掲載されていました。2002年版では「Rotala najean」(nanjeanには
なっていない)に変更されております。水草自体は同じものです。
また、トロピカにおいてはRotala sp. Nanjenshan」としていますが、同時にもうひとつの
名称のMayaca sellowiniana」を載せております。
注釈には「この草の正しい名前に幾つかの不安がある。かつてマヤカで販売していたが、
これはロタラである。」というような記述があります。
リリース初期にこの草を「ラージマヤカ」で販売していた経緯があり、その釈明かと
思われます。

以上のように、ファームから入荷する水草に目を向け続け、注意深く観察していると、
思わぬ発見や疑問があります。
これは多くの入荷に携わる問屋やショップが把握しておくべき事柄であります。問屋は
扱う量・出荷先が多く、ルーティンワークになるので仕方ないのですが、特にショップは
常に入荷した水草に目を向け、チェックを怠らないようにすべきであります。
水草専門店であるならばなおさらです。私も気をつけていく次第であります。

現在、トロピカとオリエンタルから入荷する「オランダプラント」は「ポゴステモン」であり、
国産ファーム等から入荷する「昔のオランダプラント」が「オランダプラント」なのであります。
入荷時の名称のままなんの疑問も持たず販売してしまうことは混乱を招くことになります。

2006年4月27日木曜日

日本に水草を送り出しているファーム

近年、日本に水草を送り出すファームや業者が増えてきました。
かつて日本上陸を果たすとは思っていなかったところからも入荷がありました。
私たちが良く知っているシンガポールのオリエンタルアクアリウムやデンマークの
トロピカ社をはじめ、かなりの数にのぼっております。
先の記事にも登場した数社のファームを始め、今後このブログに記事を掲載するにあたり、
入荷頻度に関係なく、知られているファームとその代表的な水草を紹介しておこうと考えます。


Tropica(デンマーク)
グロッソスティグマ・キューバミニパール・ブラジリアンコブラ・ミニマッシュルーム
ミクロソリウム“トロピカ”・ミクロソリウム“ウィンデロフ”・Cry.ウェンティ“トロピカ”

Hans Barth Dessau(ドイツ)
エキノドルス:“アパート”・“ローズ”・“ルビン”・“オゼロット”・“インディアンレッド”
アフリカンオテリア・クリプトコリネ ヒュードロイ・クリプトコリネ ローザネルヴィス
アヌビアス コーヒーフォリア・ハイグロフィラ バルサミカ・エキノドルス ホリゾンタリス

Aqua Flora(オランダ)
エキノドルス“アフレイム”・イエローホトニア・斑入りルドウィジア グランデュローサ
*おこし肥料

AQUQ FLEUR(オランダ)
アヌビアス ナナ“ボンザイ”・エキノドルス“ミディフルール”・エキノドルス“ルブラ”
エキノドルス“クリレニ”・エキノドルス“コンパクタ”・ヨーロピアンモスボール

KAREL RATAJ(チェコ)
エキノドルス:ロンギスカプス・アフリカヌス・ヴェロニカエ・インパイ・“イザベラ”
エキノドルス ポルトアレグレンシス

DENNERLE(ドイツ)
エキノドルス ジャングルスターシリーズ・エキノドルス コーディフォリウス“ミニ”
エキノドルス“フォックステール”・ハイグロフィラ ヴィオラセア・テンプルプラント“コンパクト”

GULA(ドイツ)
クリプトコリネ バランサエ“グラナット”・アヌビアス“クラウツン ドッペル”

Zoologica(ドイツ)
エキノドルス:“デビルズアイ”・“レッドオクトーバー”・“レッドデビル”・“デジタルアート”
エキノドルス:“レイナルズ キティ”・“レイナルズ フェリックス”

Oriental Aquqrium
エキノドルス:“オリエンタル”・ブレヘリィ“アズレア”・ムリカータス“グリーン”・sp.ロングリーフ
クリプトコリネ ウェンティ:“ハイブリッド”・“グリーン×トールフォーム”・“グリーン ゲッコウ”
クリプトコリネ:リングア・ウンデュラータ“レッド”・丸葉系バラ株
ロタラ:ワリッキー“ロングリーフ”・マクランドラ“グリーン”・斑入りマクランドラ
ラナリスマ ロストラータ

一般便でやってくるその他の地域のファーム
APCなど(タイ)
かなりの種類の水草が入荷しております。最近は来ませんがエキノドルス アフリカヌスなども
手がけております。

インドネシア
安価なワイルドバラ株のクリプトがスポット的に入荷するとここです。
今までの入荷例ですと、インボイス名でゾナータ・ロンギカウダ・ストリオラータ・ヒュードロイ・
ブローサ等が入荷しておりますが、ゾナータ・ロンギカウダはフスカであります。ブローサも
何故かフスカでありました。ストリオラータは茶色の葉で、根茎が大きいものが入荷
しております。数年前にブセファランドラをサンプルで出してきた実績があります。

かつて入荷のあったファーム
STOFFELS(オランダ)
かつて大量にホレマニーグリーンのナローリーフを送り込んできました。
組織培養と思われますが、大変質の良いものでした。

VAN DE VERDE(オランダ)
数回のみサンプル的に入荷しました。アヌビアス ハスチフォリアなどは巨大で、
40センチ程もあるポットが来ました。しかしながら種の認識は若干甘いようであります。

その他雑誌で紹介されたファーム
PK(ドイツ) AQUARIUM SPORT(オランダ)などが記憶にあります。

先日発売されたマリン企画「AQUA PLANTS」誌においてバース氏ファームの紹介記事で
ありましたように。その他下請けなどが存在しております。

水草を入手する上で、ファームの状況や癖を押さえておくことは大変重要なことであります。

書籍から得られる水草情報

近年は水草関連の書籍が容易に手に入る環境になりました。
また、新たなものが出版されており、様々な情報を得ることが出来ます。
現在はインターネットの普及により、書籍が全く及ばない速度で情報が
更新され、開示されております。

しかしながら、インターネットでは知りうることが出来ない情報が、書籍には
大量にあります。

例えば先日入荷した「クリプトコリネ ウェンティ グリーンゲッコウ」。
この草の存在は、数年前に少数入荷したオリエンタルアクアリウムの
2002年度版カタログに既に掲載されております。

そこには、このクリプトが

・突然変異であること
・新芽は中央脈にそって茶色が乗り、黄緑の葉を展開すること
・その後は薄い緑になること
・中景用であること

などの特徴を示す記述があります。


同時に「クリプトコリネ ウェンティ カメレオン」が掲載されており、
もちろんこちらが以前日本の書籍でも紹介された「斑入りウェンティ」で
あることは容易に理解できます。両種を混同することはなかったのです。

また、時折ご質問があります、「アフリカンチェーンソード」ですが、
こちらは「AQUARIENPFLANZEN・DE WIT著」に「Echinodorus humiris」として
既に掲載され、シノニムは「Ranalisma humilisSagittalia humilis2つが
記されております。もちろん産地はセネガルやザイールなどアフリカと
なっております。


さらにaquarium plants・Rataj&Horeman」に「Ranalisma humilis」として
掲載され、シノニムは「Echinodorus humiris」となっております。産地はセネガルと
なっております。これらの情報は約10年前より一部では知られており、水草関連の
洋書の入手が容易になった2000年頃からは普通に知ることが出来たことであります。

オリエンタルアクアリウムからは現在「Ranalisma rostrata」のインボイス名で
やってきます。
こちらのラナリスマ属は、aquarium plants・Rataj&Horeman」において
東南アジア産として掲載されております。
1995年版のオリエンタルアクアリウムのカタログには「Echinodorus humulus」の学名で
ブラジル産として掲載されております。
2002年版カタログ(前述のウェンティ等掲載)には「Ranalisma rostrata」の学名で
東南アジア産として掲載されております。

私自身はチェックが甘く、同種と言う推論を持っておりまして、反省しております。
改めてここに訂正させて頂きたく思います。
ただし、流通名の「エキノドルス ハムリック」は国産ファーム等の適当な呼び名であると
思われます。

しかしながら、いつファームで種の交代があったのかは不明であります。また、
種の交代自体が疑わしくもあり、元々東南アジア産の物であったにもかかわらず、
詳細が不明だったために容易に調べがついたエキノドルスと言うところから
ブラジル産という適当な情報を載せた可能性も否定できません。

逆もまたしかりで、水草自体はアフリカ産のもので変わっておらず、情報のみが
後付けかもしれません。

以上のように詳細不明と思われる水草も、ファームからやってくる以上、
既知の水草であり、水草の書籍を少し探せば判明することが多いことがわかります。

2006年4月22日土曜日

消えゆく水草

最近お問い合わせがあります、「An.ナナ“スターダスト”」ですが、これは
数件の大型店さんからの情報で、作出・販売していたオリエンタルアクアリウムが
生産を止めてしまったようです。

私はリリース直後から「小型・綺麗・丈夫・成長が遅い」と言うことから、稀に見る
「改良」品種と感じておりました。
ただ、アヌビアスの水草界における立場はほぼ底辺に近く、残念ながら
見過ごされる結果となりました。そして、ファーム物という安心感からか、
キープされる方も殆どいらっしゃらなかったようです。
実際問題としては、何気に購入して使用し続けている方もいらっしゃると思いますが、
表面化しないのが現状です。

別の例としては「ミクロソリウム sp. レッド」と言う、インパクトのある名前の
ミクロソリウムが、かつてトロピカ社からリリースされました。
しかしながら赤とは程遠く、言われてみれば新芽に赤みが差すような・・・そんな
印象でした。
当然のことながら、需要は急減、入荷もなくなると共にファームでの生産も終了しました。

ファームも企業努力をしているようで、様々な品種・種を送り出してきます。
その中には、昨今のエキノドルスのように目も当てられない改良??品種も多数あります。
しかしながら、時折良いものが見出されます。

また、ワイルド入荷の水草の中にも水草好きの心をくすぐるものがありますが、
手をかけると良く増えるのですが、手を抜くと消滅するもの、成長速度や扱い
やすさから使えるものの地味過ぎると言ったものが姿を消していっております。


消えていった・消え行くファーム物の一例

青=消えてしまったもの 紫=恐らく消えてしまった・消え行くもの

アヌビアス ナナ バリエゲイテッド(ベタ斑のナナ・オリエンタル)

アヌビアス ナナ スターダスト(オリテンタル)

アヌビアス ナナ ナローリーフ(オリエンタル)

アヌビアス ナナ ラウンドリーフ(オリエンタル)

アヌビアス ナナ マーブル(オリエンタル)

アヌビアス sp. A13(デナリー)

アヌビアス sp. A14(デナリー)

アルテルナンテラ ローズ(ピンクのレインキー・アクアフローラ) 

エキノドルス グリーンパンダ(デナリー)

2006年4月1日土曜日

透明深緑葉系エキノドルスの流通名1

近年は入荷が緩やかになった深緑のエキノドルス。
入荷ラッシュの当時、やってくるのは良いのですが、もちろん基本的には全てが
sp.ものなので、「エキノドルスsp.産地名」というのが通称名になります。


例えば有名なところで“イボレ”などはどうでしょう。
入荷時の名称は「エキノドルス オパクス “イボレ”」です。
もちろんヴェルデの形がオパクスと言う一般認識がありますので、
オパクスと言い切るのは厳しいところですが、大きさや形状から変種と言っても
許されそうな範囲ではあります。
現在は単に“イボレ”で通用しています。


後に業者の方が採集した人の意向で“ライノ”と言う名前にしたいと仰ったようですが、
入荷からかなり時間が流れて、しかも同形状に“ラウンドリーフ”“パラグアイ”果ては
入荷時の名称と実際の草が異なる“オパクス ウルグアイ産”(注1)と言う3つのエキノドルスが
存在するところに、いきなり“ライノ”と言われても違和感と混乱を覚えざるを得ません。

しかもあの形状を“ライノ”にした場合、かなりややこしくなります。
イボレという場所はウルグアイにあります。“ラウンドリーフ”もウルグアイ産です。
もちろん“オパクス ウルグアイ産”(2便目も含む)もウルグアイ産です。

大雑把に“ライノ ウルグアイ産”と言った場合、この3つ全てを指すのです。
これでは何がなにやらわかりません。ですから、入荷時の産地名と、どの便で入荷したかを
示すような文言で草の区別を行う方がよりわかり易いと考えられます。

時折「リオ イボレ産」と言われることがあるようですが、入荷時の業者の情報では
イボレは村の名前で川の名前ではありません。

 



(注1)
“オパクス ウルグアイ産”が入荷した際に、同便にて“sp. 丸葉スーパーウルグアイ”
2種が入荷しました。その際、残念なことに“オパクス ウルグアイ産”で流通したものの
多くが“sp. 丸葉”だったのです。

そして、その後の便で“オパクス ウルグアイ産”が入荷したのですが、残念ながらこちらは
“sp. 丸葉“ポルト ナロー系”の混載でした。