2010年8月21日土曜日

水草と園芸に垣根はあるのか

近年様々な植物が水草ルート(問屋・採集者)から入荷するようになっております。
元々はクリプトコリネやミクロソリウム、アヌビアスと言った古くから水草として
流通している種の採集ものが主な入荷でしたが、近年は物色がその周辺植物に
まで及び始めました。

その中にはアヌビアスのように水陸共に問題無く育成できる種があります。
ただ、それらの育成は今に始まったわけではなく、数十年前の欧米の書籍には
すでにスキスマトグロッティスやピプトスパサを水中に沈めて紹介しているものが
存在しておりました。

ですので、古くからのマニアにとって、水辺~湿地に生えるサトイモ科の仲間を
育成することはそれほど不自然なことではないのだと考えます。
また、この約10年でクリプトコリネの水上育成の存在もかつてとは比べ物に
ならないくらい知れ渡りましたし、水中・水上共に育成できるブセファランドラの
登場によって、さらに水草及びらしき植物を鉢植えにしてケース内で育成する
行為に対して、違和感を抱くことも徐々にではありますが減りつつあります。
もちろんビオトープ(ここでは水鉢での育成を指します)も、その一助となったと
考えられるものであります。

そして、現在は水中育成がなんとか可能である種から元来園芸で取り扱うような
種まで、多岐に渡り入荷するようになりました。
近年アクアリウム(主に水草)を始めた方々や、レイアウトメインの方には
「それは水草なの?」という疑問が生じ、違和感を持ってその異様な光景を
ご覧になっているかも知れません。

しかしながら、それらの植物は水草の生えている川の岸辺の岩肌に着生していたり、
水草の水上葉の間から顔をのぞかせていたりと、非常に水草たちと近しいところを
生活圏としています。

水槽の隣にパキラやドラセナ、ポトスなどを飾ろうと考えられたことは
ありませんか?基本的にはそれと同じなのです。どうせ並べるなら、
水草の雰囲気に近いもの、水辺やジャングルに生えているもの、更には
同じ場所に生えているもの、すなわち同じ産地のもの、そういった植物の方が
不思議とすんなり溶け込みます。

近年そういうレイアウトは殆ど見なくなりましたが、かつてはアトラスレイアウトと
言って、現地を模したレイアウトがよく作られていました。たとえば
カージナルテトラにはエキノドルス、エイクホルニア、ヘテランテラ、ルドウィジアなど、
ラスボラにはクリプトコリネやミクロソリウム、ハイグロフィラ、ランプアイや
ペルビカクロミスにはアヌビアスやボルビティス、タイガーロータスやクリナムなどと
いった具合に、産地を統一することによって、より自然に、より現地へ想像を
膨らませると言うとても楽しいものです。
そしてやはり、それらは不思議と一体感のあるレイアウトになります。

また、古くはダッチアクアリウムでは、水槽内のみならず水槽台やその周辺の
インテリアにも統一感を持たせ、四角のガラスの中だけでなく、その周囲全体を
ハイレベルにレイアウトしております。
鉢植えを水槽のそばに置いたり、水槽の上の方からハンギングしたりと
それは水槽を中心に植物を楽しむと言った姿勢と言えるかも知れません。

水草にこだわるのも、また1つの楽しみ方です。私も水中育成にこだわってきた身
ですのでそれはとても理解出来ることです。
しかしながら、同じ植物であり、ましてや現地に想いを馳せるアイテムとしては
水草と魚に+αとして加えるのにふさわしいものだと思います。
園芸ルートでは、観賞価値・商品価値・育成法などにより、扱わない・扱えない
植物たちがアクアルートでは入荷します。もちろん同じもの・同じ仲間の物が
入荷することもありますが、園芸品では代用の効かないものが多数存在します。
それも含めて、楽しんでいただけるものであると確信しております。
少しでもご興味があるようでしたら、鉢植えなんて園芸だ、と言う見方を少し横へ
置いて、その世界の片鱗を垣間見るのも楽しい息抜きになると思います。