2006年5月20日土曜日

ファームが作る水草

インターネットで世界を見渡してみても、アマチュアやショップが所有している
水草の種類数は日本が群を抜いて多いように感じます。
アフリカ産のものは地の利がありますので、欧州勢に軍配が上がりそうですが、
東南アジア産や南米産の水草は圧倒的かと思われます。

その中で日本人がアクアリウムに導入したものが、東南アジアファームに渡り、
ヨーロッパに渡るということが見られます。
例えばスターレンジやレッドピンネイト、トニナsp.、ケヤリソウなどがあります。
元来熱帯域の植物ですので、水上葉を作るものは東南アジアファームでは
圧倒的な速さで生産することが可能です。

逆に、ある程度水質調整を必要とし、しかも水中葉で生活するトニナや
ケヤリソウは苦手なようで、入荷も不定期で状態も良いとは言えない状況であります。

透明深緑葉系エキノドルスはどうでしょうか?
エキノドルスで有名なラタイ氏のファームですら、日本に供給できた深緑の
エキノドルスは数年かかってポルトアレグレンシスがほんの数十株であります。
また、かつてのデナリーですらホレマニーグリーンのオーダーをかけてから
2年の歳月をかけて十数株しか日本に送り出せませんでした。
バース氏のファームからは本物と偽者が入り乱れて入荷しておりました。
数が合わないと似た種類で穴埋めしたり、名前だけ珍しいものにして実際は
別物を送ってくるのは海外ファームの悪癖です。

もし数が出来ているのであれば、ヨーロッパにもっと出回っているはずですし、
トロピカあたりがカタログに載せてリリースしても良いはずです。
しかしながら、ドイツでは深緑のエキノドルスは珍しいようです。このことから、
生産量は知れている、または生産すらしていないと考えられます。

先日、東南アジアファームよりホレマニーグリーンの入荷がありました。
恐らく日本から渡ったものでしょう。しかしながら似たタイプのホレマニーは、
日本では10年前から流通しておりますし、入荷したものと同タイプのものは、
ここ5年以上十分量が流通しております。しかしながら、先日ようやく十数株程度が
入荷したのです。

例えばオリエンタルアクアリウムでは10年以上前から、ホレマニーグリーンを
組織培養で作っていたようです。しかしながら、入荷は大変不定期で頻度も
低いものでした。また、入荷しても数は25株(1束)しか来ず、しかも大きさは
必ず6cm程度でした。組織培養でもその程度です。

ヴェルデ川産のオパクスが国内で大量に流通するようになってすでに
5~6年が経過しております。組織培養を行っているのであれば入荷する前に、
輸入業者へのリストに名前だけが載っていたり、カタログに写真入で
載っているはずです。オリエンタルのカタログにクリプトコリネ “ローザネルヴィス”が
載っているのがいい例であります。

結局、水中葉で生活するエキノドルスで、しかもシュートを出しづらい種類である
深緑のエキノドルスは、放っておけば大量に子株が取れる黄緑のエキノドルスと
比べるとファームが作る際に採算が合わないのが実際のところではないかと言う
推察が成り立ちます。

以上のようなことから、生産していない、または取り組んでいるものの商業的な
扱いになる目処が全く立っていないと考えられます。ホレマニーも偶発的入荷で、
今後安定した大量の入荷が見込めるとは考えにくいものであります。
先日の入荷から1ヶ月以上の時間が経過しておりますが、入荷はありません。
敢えて言いますが「ホレマニーですら」この状況です。
親株が5株もあれば、年間数百は生産が可能なはずですが・・・

これらに時間とスペースを割いている位なら、新たな有茎草を模索・栽培する方が
会社としては正解であるのでしょう。

2006年5月14日日曜日

ファームのモラル

毎週のように海外の水草ファームから大量に水草が送られてきます。
各社カタログやリストがあり、当然水草には各々名称・学名・コードなどがついております。

購入する際は、外観(草姿)から得られる情報及び、表記される名称で種類を
選ぶことになります。
例えばロベリア カージナリスやウィステリアなどは草姿から間違えようがありません。
水草が好きな人ならば、名称の表記が無くても「これはロベリアだ」と購入できる
わけであります。
このように個性的な草姿であり、また、環境により変化する草姿も独特のものである
種に関しては混同してしまうことはありません。

しかしながら、葉のみでは種の特定が困難なものがあります。それはクリプトコリネの
丸葉系、そして水上葉のエキノドルス等であります。
これらは、花が咲いたり水中展開して初めて種が確認できることが多いものです。
こうなるとインボイスネームを信じるしかないのですが、明らかに怪しい場合があります。
また、そういったものは殆ど名前と物が異なる結果となります。

以下、ファームによる確信犯と思われる例を挙げます。

入荷時の名称        実際の種          出荷したファーム

エリオカウロンsp.     ハイグロフィラsp.    デナリー(現在入荷無し)

Ech.ホレマニー      Ech.ルビン        デナリー

Cry.グリフィティ      Cry.コルダータ      バース

Cry.ローザネルヴィス  Cry.コルダータ      ラタイ(恐らく一度のみ)

Cry.グリフィティなど   Cry.コルダータなど    オリエンタル

Cry.コロナータ       Cry.ウステリアーナ    ダッセン(現在入荷無し)


このように、ファームは数合わせ的なことを行ったり、売上のために別種を
送りつけたりする場合があります。
その名称で入荷してしまった場合、問屋はそれで卸さなければならないわけです。
違ったからと言って何もかも処分とはいかないのであります。もちろん気付かない、
または判別が不可能である場合が最も多い思われます。

そのような水草を浮き彫りにするのは、数量を見ているとは言え水草が目の前を
素通りしてしまうのが日常の問屋より、むしろ日常から様々な水草を観察・育成
している専門店の力量にかかってくるわけであります。

ですので、購入の際に疑わしいものはショップに確認をとり、それでも不明な場合は
ご自身の目を信じるか、購入を控えるかになるわけであります。
本来であれば、ファームが誠実に種を表示すればなんら問題がないはずなのです。
これはファームのモラルや水草に対する意識の高さ・こだわりによるところのだと
考えます。


(補足)
オリエンタルから入荷するクリプトの安価なバラ株の場合は、名前が
いい加減なのは周知の事実であり、逆に何になるかと言う楽しみもあるので
実害は無いのが現状であります。