水草市場にもごく稀にトレンドが発生することがあり、ある期間に
特定の属、またはある科のいくつかの属に人気が集中することがあります。
初めは極々一部のショップや業者がそれらの魅力や可能性を見出して
取り扱い始めます。そこでマニアの中でもその仲間に注目する、先見性の
ある人が少し現れます。
そうなると、次の入荷が待たれるところですが、プロ側は熱心なマニアの
要望に応えようとします。そして新たな種がもたらされます。
そのころには、限られた場所ではありますが、それらの名前や画像を
時折見かけるようになります。
そうなると、更に一部の人たちがその存在に着目してコレクションや育成を
楽しみ始めます。まだその頃は、特定のショップのみに最新種が入荷する
こととなり、増殖株などもごく少量しか出まわりませんが、目にする機会は
飛躍的に増えることとなります。
その後の展開はかつてのインターネットが無い時代や、ナローバンドの
時代では伝播する速度も緩やかだったのですが、現在の大容量の
インターネット接続の普及・コミュニケーションツールの発達等により
良くも悪くも超高速で広まるようにまりました。
そうなると存在自体は一般化に向けて動き出すのですが、入荷数・頻度の
上昇による価格の緩やかな下落と、水草の単価として許容できる範囲が
異なる層からの期待価格とのギャップが生じることとなります。
そこで持ち上がるのが
「ファームによる組織培養大量生産→価格下落」説
であります。
まず、この状態が発生する対象としては、有茎草はあり得ないと
言うことです。何故かと言いますと、有茎草の場合はそんなものを
期待するまでもなく個人レベルで短期間に大量に増殖させることが
可能であること、海外から日数をかけて輸送したものより、翌日に
クロネコヤマトで届いたものの方が状態が良いということ等が
あります。また、ファームで生産する場合費用が発生しますが、
個人育成の場合、「趣味ですので費用は0」です。それが猛烈な
勢いで伝播するわけですから、日本で人気があるからと言って、
風変わりな有茎草をコストをかけて、日本での人気が頂点付近の
期間に間に合うように出荷してくるのは、国内ショップですら
現状では困難を伴うのですから、ファームレベルでは事実上
不可能であります。
トニナやスターレンジが東南アジア、欧州から入荷しています(いました?)が
これらは日本でのブームが終焉を迎えるころにようやくある程度
コンスタントに入荷するようになりましたし、組織培養で単価が下がったと
言うものではありません。普通に栽培して、むしろいろんな面を考慮すると
割高に入荷しております。
また、ファームの定番種としての機能は明らかに年々低下してるのが
現状であります。
かつて、その説がごく一部でささやかれたのは透明深緑葉系エキノドルスで、
組織培養の株が安価で出回ると言う話も散見されましたが、水草の歴史を
振り返ると、それが不可能であることを推測するのは至極容易なことであります。
結果的にオパクスやイボレ等の丸葉系が組織培養で大量生産されることは
ありませんでしたし、私個人が収集している様々な情報を整理すると
今後も無いと思われます。
クリプトコリネに関しても、欧州の研究家・ハイアマチュア等が日本の
何倍もの歴史をバックに持ち、育成しているにもかかわらず、ファームから
入荷するのはスリランカ狭葉系、タイやインドの細葉系のみであることや、
こちらも私個人で収集した情報からも、今後も無いと思われますし
もしあるとしても、かなり先のこととなるでしょう。
そして現在はブセファランドラに注目が集まっているかと思われます。
こちらも歴史が示す通り、組織培養で大量に生産されることは
考えにくいと思われます。
まず第一に、「採ってきた方が早い」のです。
東南アジアファームから入荷する同じような草にピプトスパサ リドレィが
あります。しかし、これはとても組織培養されているとは思えません。
大量に採集したものをファームにてストック、それを販売していると
考えるのが妥当であります。
また、近年の入荷状況を見ても容易に理解できるかと思います。
そして、ファームが(大きな市場を考えた時であり、私はそうは思いませんが)
見た目の大して変わらない植物を何通りも区別してそれぞれ組織培養に
かけると言うことは合理的ではありません。他種と同様に、様々な面を
考慮して今後も無いと思われます。
ですが、私の想像を覆して大量生産がなされ、流通し始めた場合は
下記のようになると考えますので、一般化という面では成功と
なり得るかと思いますが、低価格での流通と言う面では、大きな
意味はないと思われます。
・1産地または1タイプのみの流通
・それも、産地は不明
・ポットに1~2株入り
・市場価格は700~1500円
・根茎は殆ど無いか極短い
・一定期間で流通は滞る
・日本がターゲットではない
余談ではありますが、ミクロソリウムでも人気種である「本ナロー」ですが
こちらも大量生産されて入荷するわけではありません。ミクロソリウムの中で
日本国内において最も人気のあると思われる本種が海外ファームでは生産
されません。
あまり大きくならず、使いやすいトロピカ社の「ミクロソリウム フィリピン」も
生産は終了しました。それが何を意味するのか、想像に難くありません。
先日入荷したトライデントはアクアフルールが入手して6年と言う年月を
経て、ようやくリリースされました。
これらは一度、元株が国内の趣味家に投入されれば、ファームからの
入荷を待つよりも、国内での栽培株の流通の方が早いのです。
トライデントがなぜ、フルールからの入荷を待たねばならなかったのか。
これは本種をレイアウトに使用しているメーカーがユーザーの要望に
前向きであればそうはならなかったのでしょう。
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