2015年11月26日木曜日

too big to bring up

日本のアクアリウム業界は一昔前までは
「60x30x36(WxDxH)cm」
と言うサイズが主流でした。

しかしながら、景気の悪化をはじめとする様々な
理由から、以前のブログにも散々書いた通り、水槽が
小型化し始めます。
そうなると入れられる生体(水草・魚)がかなり限定されます。
だからと言うわけではないのですが、水草を売り始めて
もうすぐ17年が経とうとするわけですが、いつまでたっても
無くならない声があります。

それは

「大きすぎて育てられない」

と言うことです。

もちろん、手持ちの水槽サイズは人によって全く
異なり、主力が120の人もいれば30キューブの人も
居るでしょう。
例えば売ってるサイズが葉長60cm・葉数100枚の
エキノドルス ウルグアイエンシスなら30キューブの人は
「入らない」と言っても仕方ありません。
ただ、殆どの場合はそのような株は販売されておらず
草丈10cm強の水上葉だったり、そこから水中葉が展開した
15cmほどの株だったりします。ウルグアイは1例ですが、
多くの場合、販売されている姿は最終形には程遠いものです。

つまり、購入の段階では水槽に入るんですね。もちろん
底床は新しめのアマゾニア、二酸化炭素は十分に添加して
照明はリシアやグロッソスティグマがしっかり育つくらいに
明るい。そう言った場合は多くの水草が勢いよく成長
するでしょう。ほとんどの有茎草はほどなく水面に届きます。

そこで皆さんは何か作業を行いませんか?
そうです。トリミングです。
ここで思うのですが、有茎草も伸びれば草丈50cm以上に
あっさり到達しますが、これは長すぎて入らない、とは
言わないんですね。なぜか。そう、トリミングするからです。

グロッソが横に這います。どんどん這って水槽壁面に
ぶつかりますが、これも水槽幅に入りきらないとは言いません。
なぜか。そうです、トリミングするからです。


私の感覚が変なのかもしれませんが、有茎草はトリミング
ありきで話が進む反面、エキノドルスやアポノゲトン、
ニムファなど大きくなることが多い種類はトリミング前提での
話にならないのが不思議なんです。なぜかそれらだけは
ダイレクトに結果の方へ思考が飛ぶんですね。
大きくなるものはトリミングで調節すれば良いと思うのですが
なぜかそういう発想にならないことが多いです。

もちろんその種類の小さい姿はちょっと違う、そこまでして
その種類は育てたいと思わない、と言われればそれまで
なので、水草の図鑑に草丈30cm以上と書かれているものは
すべてオミットしてください。

エキノドルスの葉が増えすぎて他の水草が陰になるなら
葉っぱむしるだけで解決します。大きくなりすぎる時は
ガスを絞ったり肥料を切ったり、更には一度抜いて根を
処理して植え直します。鉢植えにして根を制限することも
可能です。増殖させて子株に更新してしまうことも出来ます。

ニムファが浮葉を出し続ける時は、出なくなるまでむしり
続ければそのうち水中葉に戻ります。
アポノゲトンもすごい勢いで葉が展開するならじゃんじゃん
むしればOKです。そのうち休眠します(笑)
ニムファも同様です。出たり引っ込んだりして楽しいものです。

クリプトコリネなどは大きくなったり増えてボリュームが出たら
私などは勿体なくてトリミングなんてとても出来ませんが、
しっかり育ったクリプトは根茎が底床中を這っており、
トリミングを施してもそのうちぴょこぴょこ出てきます。水草の
入れ替えで全部引き抜いたはずのクリプトが、忘れた頃に
生えてきた覚えが皆さんにもあると思います。

私はレイアウトをやらない(正確には出来ない、ですね。)ので
関係ないですが、レイアウトをやる時には水草のサイズ調整が
必要だと思うんですね。
その際に、その草のMaxサイズがどうこうと言うことには
ならないと思うんです。その場所にこういう草があってほしい、
と思ったときに、それが大型種しかない場合、サイズコントロールを
して使うと思うんです。

いくらでも方法があります。そういうのが水草水槽と上手く
付き合っていく、限られた水槽で長く遊び続ける技術だと
思ってます。

2015年11月9日月曜日

水草(と熱帯魚)は「流行っている」??

お店を始めて16年が経過しました。
観賞魚業界自体はバブル崩壊後、当然のように
市場規模は右肩下がりとなっていたのですが
小型美魚や水草は入荷に助けられていたのか
局所的に火柱が上がるように盛り上がってるものが
ありました。

しかしながら、前述の通り業界自体は徐々に
その勢いが削がれ、私がお店を開いた時期には
「悪い時期に始めるね。」と言う声をいただきましたし、
問屋、メーカーからは「今が底だから、ここで頑張れば、
景気が良くなれば。。。」という話も毎年のように
聞いたように記憶しています。
「今が底」と言う見立てには特に根拠はなく、今までで
一番悪いから底だと言うだけにすぎず、まさに
「落ちてくるナイフ」でしょう。まだまだ落ちている
過程にあるのです。

その16年の間に、数少ないご来店の「マニアでない」
お客様が
「水草(熱帯魚)って最近流行ってますよね。」
とおっしゃることが稀にあります。
もちろん私は「いえ、まったく流行ってないですね。」と
即答するのですが、どういうわけかこのフレーズは
忘れたころに登場するのです。

縮小する観賞魚業界の中で踏みとどまっているのは
金魚や錦鯉、近年はメダカが躍進したのが記憶に
新しいと思います。
では何が足を引っ張っているのかというと。。。そうです。
熱帯魚と水草です。

以前の記事にも書きましたが、熱帯魚関連は規模と
サイズがスパイラル的に矮小化しています。
私もそうでしたが、みなさんもショップ巡りのコースが
何パターンかあると思います。そのコースに入れていた
大型店、専門店などが寂れ、閉店していくのを
目の当たりにしている人も多いはずです。こんな状況で
どう考えても「流行っている」とは思えません。
途中で新しいショップが出来たりして、頑張って
贔屓目に見ても「横這い」が良いところでしょう。
しかし近年は、ショップが出来る速度と減る速度の
均衡が崩れ、減る方が優勢になっており、需要に合った
マーケットになるにはまだまだ矮小化が進むでしょう。

また、ここ数年はアグラオネマ ピクタムと言う
クリプトコリネの副産物で登場した大スターが
目立つようになっているのは周知の事実です。
当初は、観葉から引っ張った私、とんでもなく素晴らしい
野生株(エウレカ・ニルバーシュ)を見つけたアズールさんの
卸先、そしてチームボルネオさんとその卸先程度でしか
扱っていませんでした。
ピクタムのポテンシャルの高さからあっという間に
スターに駆け上がったわけですが、まだ狭い
水草関連のごく限られた中での話でした。

そしてLAさんのイベント、AZさんの即売会などや
ヤフオクの影響もあり、少し外側の人たちを巻き込むように
なりました。
そうなると観葉どころか水草すら添え物であった
アクアショップでもピクタムが販売されるようになり、併せて
その他サトイモ科、シダ類などが一気に並ぶようになり、
問屋である神畑さんが扱うアグラオネマ ピクタムの
Gシリーズも毎回すぐに完売するような状況です。
私もろくに買えませんから(笑)

さて、そこで振り返りましょう。

まず私のところや水草に強いと言われるショップで、
クリプトコリネや有茎草などの水草がひっきりなしに
売れるのであれば、ここまでピクタムにスポットが
当たっていないだろうし、そこに様々な資源を割くことも
なかったでしょう。これを裏返してください。

そうです、簡単なことです。マーケットは
需給(+心理)で成り立っているのです。

元々の取り扱い商材、つまり熱帯魚やエビ、水草が
売れている状況では専門外のピクタムを売る必要が
無いんです。
水草と周辺の植物を扱っていた私のところや、
元々爬虫類・両生類と共に熱帯植物を扱っていた
ショップならアイテムの1つとしてちょっとした
人気種的に扱うこともあるでしょう。
(もちろん、自分だけを正当化する気はありませんが。)

普通の熱帯魚店が限られた経営資源をピクタムや
ホマロメナなどのサトイモ科、そしてドリナリアや
ビカクシダ、フペルジア等、さらにはBRUTUSの
影響でしょうか多肉植物や木本等の畑違いの
これらへと、新たに振り向ける理由はどのあたりに
あるのでしょうか。

良い意味でも悪い意味でも短絡的に考えた場合、
「売れる」からです。そこに器具を山積みしておくよりも、
水槽を増やして熱帯魚を入れておくよりも、有茎草を
頑張って増やして並べておくよりも、単純に売れるからです。
しかも熱帯魚や水草に比べてロス率が大幅に低い。
薄利多売の器具や生体よりも利益率が高いし単価も高い。
その上、手間もかからない。
経営判断としては当然のことでしょう。

プラス、その光景を見ていて、ふと脳裏に浮かぶのは
大手家電量販店が日用品を販売している姿です。
もちろん上記の理由もありますが、家電量販店の
日用品的理由もあるのかもしれません。

これは、売り場が寂しくならないように場所を
埋めていることも考えられます。この場合、
本来なら生体や器具類で埋まっていなければ
ならない場所が、それらを置いても売れないから
より売れるであろう植物を置いていることも
考えられます。

また、日用品を置くことで、家電を買いに来る目的
以外の人も店内に引き込むということができます。
世間の植物への動き(これについても下書きしてますが
お蔵入りするかもしれません)のことを考慮すると、
ピクタムやシダ類には、今はそういう役割があるかも
しれません。今、最もキャッチーであるでしょうからね。

他には家電量販店の場合はポイントが売りですから
ポイントの消費用にあることも考えられるようです。
ただ、こちらはあまり熱帯魚店には当てはまらないでしょう。

そして最後に考えられるのは、日用品の利益が意外と
高く、置かない手は無いということです。もちろん、
上記のような効果と併せてのことではあると思いますが、
その利益は軽視できない側面もあるのかもしれません。

そう考えるとやはり、

「熱帯魚や水草が流行っている」

などとは、到底思えないのは私だけでしょうか。
上記の例は、私の居る水草界でも更に極端な立場から
見た側面に過ぎません。
ただ、そんな特殊な立場から見ていても、あからさまに
観賞魚業界は厳しいのです。

今後引き続き、まだ見えない観賞魚業界の衰退度合いが
顕在化してくることでしょう。

2015年11月3日火曜日

ゴマノハグサ科の水草たち。。。

先日、デンマークのトロピカ社より新たな水草が入荷しました。
Gratiola viscidula」と言う種類で、その名を聞いた時には
頭に「ベトナムゴマノハグサ科」がなんとなく浮かび、
もしかしたら。。。と思いましたが、まったく別種でした。

Gratiola属と言えば、水草好きはオオアブノメが浮かぶでしょう。
更に日本産好きの人はカミガモソウが浮かびます。
また、ゴマノハグサ科は水草好きには馴染み深いグループで
必ず通る道となっています。
入門種として水草を始めた頃に買ったアンブリアや
マニアに踏み入った際に集めたシソクサの仲間などの
Limnophila属。
丈夫だから買ったモンニエリ、南米有茎として集めた
パンタナール産やアラグアイア産などの個性的なBacopa属。
なぜか量販店でよく見かけた斑入りドリマリアや
水田雑草の定番種アゼナなどのLindernia属。
レイアウター御用達のNewラージパールをはじめとする
パールグラスの仲間、Micranthemum属。
もちろんこれも外せない、グロッソスティグマ。これは
Glossostigma属。

これらすべて「ゴマノハグサ科」として親しまれてきた
水草たちです。
私がぼんやりしている間に、なんとこれらはすべて
ゴマノハグサ科ではなくなっていたのです。。。
しかも結構前に。。。(笑)不勉強でした。スミマセン。


と言うわけで、水草関係で馴染みのある物を
ざっくりとまとめてみましょう。

Scrophulariaceae(ゴマノハグサ科)→Plantaginaceae(オオバコ科)
・Glatiola(オオアブノメ属):オオアブノメ、G.ヴィスキデュラ
Limnophila(シソクサ属):キクモ(アンブリア)、シソクサ
Bacopa(ウキアゼナ属):モンニエリ、カロリニアーナ
Dopatrium(アブノメ属):アブノメ
Microcarpaea(スズメノハコベ属):スズメハコベ(インディアンクラススラ)

Scrophulariaceae(ゴマノハグサ科)→Linderniaceae(アゼナ科)
Lindernia(アゼナ属):斑入りドリマリア、アゼナ、シソバウリクサ
Micranthemum(和名?):パールグラス、ラージパールグラス

Scrophulariaceae(ゴマノハグサ科)→Phrymaceae(ハエドクソウ科)
Glossostigma(ハビコリハコベ属?):グロッソスティグマ

水草としてみなさんがなんとなく知っているものとしてはこんな
ところでしょうか。
調べているとアクア関係の9割以上はゴマノハグサ科のまま
となっています。また、それ以外の湿地の植物などを紹介
しているサイトでも多くがゴマノハグサ科のままです。

これでベトナムゴマノハグサはベトナムオオバコと呼ばなければ
ならくなり。。。ません(笑)
まぁ通称名として成立してるし、属を確定させたという報告を
見たことが無いので。。。

なんでも時々は調べないとダメですね。