お店を始めて16年が経過しました。
観賞魚業界自体はバブル崩壊後、当然のように
市場規模は右肩下がりとなっていたのですが
小型美魚や水草は入荷に助けられていたのか
局所的に火柱が上がるように盛り上がってるものが
ありました。
しかしながら、前述の通り業界自体は徐々に
その勢いが削がれ、私がお店を開いた時期には
「悪い時期に始めるね。」と言う声をいただきましたし、
問屋、メーカーからは「今が底だから、ここで頑張れば、
景気が良くなれば。。。」という話も毎年のように
聞いたように記憶しています。
「今が底」と言う見立てには特に根拠はなく、今までで
一番悪いから底だと言うだけにすぎず、まさに
「落ちてくるナイフ」でしょう。まだまだ落ちている
過程にあるのです。
その16年の間に、数少ないご来店の「マニアでない」
お客様が
「水草(熱帯魚)って最近流行ってますよね。」
とおっしゃることが稀にあります。
もちろん私は「いえ、まったく流行ってないですね。」と
即答するのですが、どういうわけかこのフレーズは
忘れたころに登場するのです。
縮小する観賞魚業界の中で踏みとどまっているのは
金魚や錦鯉、近年はメダカが躍進したのが記憶に
新しいと思います。
では何が足を引っ張っているのかというと。。。そうです。
熱帯魚と水草です。
以前の記事にも書きましたが、熱帯魚関連は規模と
サイズがスパイラル的に矮小化しています。
私もそうでしたが、みなさんもショップ巡りのコースが
何パターンかあると思います。そのコースに入れていた
大型店、専門店などが寂れ、閉店していくのを
目の当たりにしている人も多いはずです。こんな状況で
どう考えても「流行っている」とは思えません。
途中で新しいショップが出来たりして、頑張って
贔屓目に見ても「横這い」が良いところでしょう。
しかし近年は、ショップが出来る速度と減る速度の
均衡が崩れ、減る方が優勢になっており、需要に合った
マーケットになるにはまだまだ矮小化が進むでしょう。
また、ここ数年はアグラオネマ ピクタムと言う
クリプトコリネの副産物で登場した大スターが
目立つようになっているのは周知の事実です。
当初は、観葉から引っ張った私、とんでもなく素晴らしい
野生株(エウレカ・ニルバーシュ)を見つけたアズールさんの
卸先、そしてチームボルネオさんとその卸先程度でしか
扱っていませんでした。
ピクタムのポテンシャルの高さからあっという間に
スターに駆け上がったわけですが、まだ狭い
水草関連のごく限られた中での話でした。
そしてLAさんのイベント、AZさんの即売会などや
ヤフオクの影響もあり、少し外側の人たちを巻き込むように
なりました。
そうなると観葉どころか水草すら添え物であった
アクアショップでもピクタムが販売されるようになり、併せて
その他サトイモ科、シダ類などが一気に並ぶようになり、
問屋である神畑さんが扱うアグラオネマ ピクタムの
Gシリーズも毎回すぐに完売するような状況です。
私もろくに買えませんから(笑)
さて、そこで振り返りましょう。
まず私のところや水草に強いと言われるショップで、
クリプトコリネや有茎草などの水草がひっきりなしに
売れるのであれば、ここまでピクタムにスポットが
当たっていないだろうし、そこに様々な資源を割くことも
なかったでしょう。これを裏返してください。
そうです、簡単なことです。マーケットは
需給(+心理)で成り立っているのです。
元々の取り扱い商材、つまり熱帯魚やエビ、水草が
売れている状況では専門外のピクタムを売る必要が
無いんです。
水草と周辺の植物を扱っていた私のところや、
元々爬虫類・両生類と共に熱帯植物を扱っていた
ショップならアイテムの1つとしてちょっとした
人気種的に扱うこともあるでしょう。
(もちろん、自分だけを正当化する気はありませんが。)
普通の熱帯魚店が限られた経営資源をピクタムや
ホマロメナなどのサトイモ科、そしてドリナリアや
ビカクシダ、フペルジア等、さらにはBRUTUSの
影響でしょうか多肉植物や木本等の畑違いの
これらへと、新たに振り向ける理由はどのあたりに
あるのでしょうか。
良い意味でも悪い意味でも短絡的に考えた場合、
「売れる」からです。そこに器具を山積みしておくよりも、
水槽を増やして熱帯魚を入れておくよりも、有茎草を
頑張って増やして並べておくよりも、単純に売れるからです。
しかも熱帯魚や水草に比べてロス率が大幅に低い。
薄利多売の器具や生体よりも利益率が高いし単価も高い。
その上、手間もかからない。
経営判断としては当然のことでしょう。
プラス、その光景を見ていて、ふと脳裏に浮かぶのは
大手家電量販店が日用品を販売している姿です。
もちろん上記の理由もありますが、家電量販店の
日用品的理由もあるのかもしれません。
これは、売り場が寂しくならないように場所を
埋めていることも考えられます。この場合、
本来なら生体や器具類で埋まっていなければ
ならない場所が、それらを置いても売れないから
より売れるであろう植物を置いていることも
考えられます。
また、日用品を置くことで、家電を買いに来る目的
以外の人も店内に引き込むということができます。
世間の植物への動き(これについても下書きしてますが
お蔵入りするかもしれません)のことを考慮すると、
ピクタムやシダ類には、今はそういう役割があるかも
しれません。今、最もキャッチーであるでしょうからね。
他には家電量販店の場合はポイントが売りですから
ポイントの消費用にあることも考えられるようです。
ただ、こちらはあまり熱帯魚店には当てはまらないでしょう。
そして最後に考えられるのは、日用品の利益が意外と
高く、置かない手は無いということです。もちろん、
上記のような効果と併せてのことではあると思いますが、
その利益は軽視できない側面もあるのかもしれません。
そう考えるとやはり、
「熱帯魚や水草が流行っている」
などとは、到底思えないのは私だけでしょうか。
上記の例は、私の居る水草界でも更に極端な立場から
見た側面に過ぎません。
ただ、そんな特殊な立場から見ていても、あからさまに
観賞魚業界は厳しいのです。
今後引き続き、まだ見えない観賞魚業界の衰退度合いが
顕在化してくることでしょう。
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