2016年9月5日月曜日

水草業界の分水嶺 (3)

水草業界の分水嶺 (1)
水草業界の分水嶺 (2)


前回は組織培養カップが登場し、その扱いや
メリットなどを見てみました。
それを踏まえ、今回はなぜこれが水草業界の
転換点になるのか、と言うことについて、
個人的に感じるところを。


組織培養カップによる販売は一見メリット
尽くしのように感じられたと思います。
しかしながら、ビギナーが水草を始めようと
思った時に販売水槽が無く、お惣菜のように
冷蔵庫に入ったカップを勧められてもピンと
来ません。
すぐ隣にはレイアウト水槽があって、このカップの
水草はこれです、と言う説明もあるかもしれませんが、
全ての入荷種の水中葉を網羅することは困難です。
また、初心者であればあるほど、培地から生えている
極小の植物と水中に揺らめく水草とはリンクさせ
づらいでしょう。

水草を始めてから嵌っていく過程に各ショップの水草が
入った水槽の個性と言うものが意外と大事なんじゃ
ないかと思うんです。
レイアウトはもちろんですが、レイアウトと販売水槽を
兼ねる水槽等にそのショップの個性や水草への思い入れを
感じられるわけなんですよ。
なので、組織培養カップをメインとした陳列だと
そう言う感性に訴えかけられる機会が減ると思います。

店側も、この楽で手間も維持費も大幅にカット出来る
スグレモノに慣れてしまうと、わざわざカップで
仕入れられるものを鉛巻きやポットで買わなくなる。
それらを陳列して、販売水槽でいかに綺麗に見せ、
すぐに売れなくてもロスの無いように良い状態を
キープする技を磨く必要も要りません。

これらを考えると、組織培養カップは水草売り場の
レベル、魅力の低下に結び付くように感じます。
また、アクア業界の今の流れに沿うように、どの
ショップに行っても水草売り場は同じ光景にしか
ならず、ショップの個性は失われていきます。
誰が並べても見た目は変わりませんからね(笑)


私自身は水草の人間なので基本的には1本ずつ
植えこんでる販売水槽がメインでポットや鉛巻は
あくまでサブでしかないと考えています。
なので、「個人的な偏った意見」としては、カップの
陳列に何ら心は動かないんです。

もちろん在庫管理の上で組織培養カップを上手く
取り入れることは、お店にもお客様にも利益です。
ただ、最近の傾斜度合いを見ていると、専門店に
なればなるほど、水草をある程度以上わかっている
人が販売対象となることが多いため、説明不要で
組織培養カップが売れてしまいます。
一見ビギナー向けのように思える組織培養カップは
実は専門店商材(すでにやっている人向け)なんですね。
これもまた内向き体質を助長する可能性があるかも
しれません。

販売水槽、立ち上げ中の水槽、綺麗なレイアウト、
コケまみれの水槽、無造作に水草が植えられている水槽、
それら全てがそのショップの個性です。

販売水槽の中で、何と何を隣接させれば
引き立て合うのか、この2種は並べると見た目に
喧嘩するのではないか、何と何を並べたときに
よく売れたのか、こう言うことの蓄積がショップの
「色」として前述のような水槽に滲み出るように
思うんですよ。

また、水草自身も水の中でこそ個性が光る。
リシアは大きな気泡を抱いてこそ輝くのです。
パールグラスは群生して気泡のシャワーを放つから
感動するのです。
水上葉で入荷している水草が販売水槽内で
劇的な変化と共に全く異なる水中葉になる様に
水草の適応力を見るのです。
それはレイアウト水槽内ではもちろん、何気無い
販売水槽の片隅からも見て取れるもの。


しかしながら、水草を販売したり育成したりする上で
水すら不要になってしまい、売り場作りも画一的に
なりつつあります。また、近年は多くの場合通販で
済ませてしまうことも多く、昔のように感動的な
水槽や水草との出会いの機会も激減してしまいました。

前述の通り、その後の水草人生において多大な
影響を及ぼす水槽と言うのはなにも美しい
レイアウト水槽だけではありません。
出来るだけ容易に、無駄なく、便利にを追及した結果、
何気ない設備も含めたその水槽全体や中身の
極一部からでも見て取れる膨大な情報は
もう必要とされなくなってきたのかもしれません。

水はどこに向かって流れているのでしょう。

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